せっけん作りやドッグアロマテラピー、犬との生活から
感じたこと、学んだことなどを綴りました。
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8月、人と動物と戦争と
2007/8/30


 8月が終わろうとしています。毎日続いた猛暑もだんだんと落ち着いてきて、秋の気配がしています。

 8月・・・・・・終戦の月。この時期、テレビや新聞に毎年報道される戦争の特集。わたしくらいの年代は、親が戦争に行ったり疎開したりした最後の年代です。子供の頃は、父が戦争番組を観るのをいやがり、ほとんど戦争について知らず、考えようともせずに過ごしてきました。でもここ数年、未発表だった当時の映像などが続々と世に出るようになり、父はどんなことを見てきたのだろうなどと思うようになりました。以前は過去の歴史としか捉えられなかったことが、わが身に置き換えてみるようになった自分。そして、どうしても考えてしまう、当時の動物たちのこと。
 
 動物との共生の気運が高まる今日らしく、今年テレビでは、フジテレビ千の風になってドラマスペシャル「ゾウのはな子」、NHKスペシャル終戦60年企画「象列車がやってきた」、テレビ朝日戦争童話「ふたつの胡桃」が相次いで放映されました。
 ゾウの花子のお話はあまりにも有名。戦時中、空襲などで猛獣が町に逃げ出すことを恐れ、猛獣処分が行われました。上野動物園にはジョン、トンキー、花子の3頭がいました。ゾウの皮膚は厚く注射針が通らない、頭のよい彼らは毒入りのエサに気づいて食べない、そして食べ物も水も絶たれることに・・・。食べ物をくださいと必死に芸をする花子のお話は、「かわいそうなぞう」という絵本で読んだような記憶があります。ちなみに、名前がひらがなのはな子は、終戦後にタイからやって来たゾウ。たいへんなストレスがあったのでしょうね、二度も人を殺してしまうという事故があり、「人殺しのゾウ」として石を投げつけられ、歯も抜け落ち、過酷な運命を背負うことになりました。
 猛獣処分の方法は薬殺でしたが、やはり毒入りのエサを食べなかった「八紘」という名のヒョウは、最後は心臓を槍で突かれて死んだそうです。
 名古屋の東山動物園でも猛獣処分は行われましたが、ここで飼育されていたゾウ マカニーとエルドの2頭は、終戦まで生き延びることができました。ゾウのいなくなった東京の子供たちからから貸して欲しいと依頼がありますが、2頭を引き離すことはできないため、東京から名古屋まで、ゾウを見物する子供を乗せた特別列車が走ったということです。
 「ふたつの胡桃」は運悪く見逃してしまい、新聞の解説しか見ていないのですが、犬が兵隊さんの防寒用毛皮にするために供出されるというような話が出ていました。食糧難のなか「犬の撲殺令」などという発令もあり、エサのかかる犬たちは犠牲となっていったようです。
 今年3月23日のコラム「おばあさんの白い犬」にも、戦争で犬を供出しなければならなかった近所のおばあさんの話を書きましたが、いくら食糧難、自分が生きるのが精一杯でも、飼い主にとっては動物と引き離されることはたいへんつらかったでしょう。

 戦時中、動物たちに生き延びるすべはあったのでしょうか?軍用に供される動物たちは、使役が継続されているときだけは生き延びられたでしょう。犬は、伝令や警護、救助、運搬などに使われたといいます。それでも、その必要がなくなったときは、真っ先に殺されたことでしょう。外国では訓練された犬の体に爆弾を縛りつけて、敵の軍用車の下に入り込んで、犬ともども爆破させるという作戦もあったようですし、地雷地帯に人に先駆けて投入される地雷犬もいました。軍用動物は兵器のひとつとして、ときに助け、ときに殺し、必要なくなったら処分されるものとして扱われていたのですね。
 ベトナム戦争でも、軍用犬が活躍しました。極限状態をともにくぐりぬけてきた犬とハンドラーは、強い信頼の絆でつながっていたといいます。しかし、戦争が終わるとそのまま遺棄されたり、安楽死されたり、犬たちは帰国することができませんでした。ベトナム帰還兵でハンドラーだった男性のインタビューをテレビで観たことがあります。いかにも屈強な男性でしたが、「自分の一生でただひとつ心残りなのは、パートナー(犬)を連れて帰ってあげられなかったことです」と、顔を涙でぐしゃぐしゃにして語っていたのが忘れられません。

 もし自分だったらどうします? 逆らえない命令なら、逆らえば自分の命がないとなれば、大切な犬たちを戦争に供出したり、見殺しにしたりできるでしょうか?

 先日、あるミュージシャンの方が、トーク番組でこんなことを言っていました。

「人として絶対にしちゃいけないことがあるよね。それは戦争だと思う。だって、戦争したら動物と同じじゃない。」

夫婦でこれを観ていたわたしたちは、「ええー!? 何言ってるの? 戦争するのは人間のほうでしょ?」と、口を揃えて叫んでしまいました。





戦場に行った動物たち
きっと帰ってくるよね
文=杉本恵理子
ワールドフォトプレス
戦場の犬たち
母さん、ボクも帰りたかった
文=河村喜代子
ワールドフォトプレス
軍用に使われたのは、犬や馬だけではありません。鳩、ゾウ、イルカ、猫・・・人間は自分たちの利益を得るためなら、小さいもの、武器をもたないものの命を犠牲にすることなんて何とも思わない生き物なのか!? それでも動物は一生懸命働いた。罪深くて恥知らずな生き物ですね、人間は。 犬種図鑑を見ると「用途」という欄がありますよね。軍用、使役、闘犬などと出ているその項目を、わたしたちは何気で見過ごしています。今は愛玩され、家族の一員であっても、そのような「本来の用途に従事している犬の姿」を、知っておくべきではないでしょうか?








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