せっけん作りやドッグアロマテラピー、犬との生活から
感じたこと、学んだことなどを綴りました。
お役立ち情報とともにお届けします。

 
犬を幸せにするということ
~広島ドッグパーク~
2006/10/18


 前回のコラム『三毛犬ももちゃん~保護犬を迎えて~』は、おりしも広島ドッグパーク救援のニュースと重なり、小さな反響がありました。動物の愛護に関わるニュースはたびたび報道されていますが、今回の広島ドッグパークの崩壊は約500頭という大規模なもので、連日のように全国ネットで放映されました。また、多くのホームページ、ブログの中にも、この惨状が取り上げられています。500頭・・・すべての犬の幸せのために何ができるだろう。あらためてペット社会の現実を考えてみようと思います。

 広島在住のお客様から広島ドッグパークの一件についてメールをいただきました。「広島に住んでいながら知らなかった、何が平和都市広島か!」と、ショックと怒りを隠せないご様子でした。ペットブームの盛り上がりとともに、各地にペットのテーマパークやショップが林立してきました。広島ドッグパークもそのような流れの中で設立したのでしょうね。オープン当初はどのような施設だったのか・・・今となっては崩壊の悲惨な情報ばかりで、うかがい知ることもできません。
 ネットで公開されている写真を見ると、どの子も小さなケージのボロボロになった隙間(たぶん一生懸命かじって開けた)から顔を出してカメラの方を見つめています。ケージから出された子はガリガリ、中には目の見えない子も。食べるもののない中、フンをめぐって熾烈な争いがあったり、耳や手足をかじられるなんてこともあったようです。みんな生き残るために命がけだったんですね。

 現在、犬を飼う世帯は5世帯に1世帯、飼えなくなった犬の年間殺処分頭数が約13万頭、これに登録外の犬を入れたらたいへんな数です。犬の寿命は、延びたとはいえわずか15年ほど、最近は愛犬を避妊・去勢される飼い主さんも多いというのに、犬の数は減るどころか増える一方。この数字は、ペットブームにのって利益追求の増殖がされている現われではないでしょうか。

 まだわたしがペット・アロマの学校に通っているときのこと、耳を疑う話を聞きました。生徒のうちのひとり(AHTさん)から、「あるペットの生体販売会社で販売された子犬はどの子も健康状態が悪く、購入後すぐに亡くなる子もいるのだが、いったいどういうわけだろう」という話が持ち上がりました。聞くところによると、そこの会社では正当なブリーダーさんの犬を扱っているわけでなく、お座敷ブリーダー、いわゆる素人増殖家が小遣い稼ぎに繁殖させた犬を扱っていたらしいのですね。だから他より激安で、大きな会場を借り切って年に何度か催されるペットフェアでは大量の犬をさばくそうです。お客さんはオープンとともに会場内になだれ込み、あっという間に売り切れ。次々とトラックで運ばれ、売りさばかれる大量の子犬たち。子犬には、JKCでも何でもない独自の血統書が付けられます。驚いたのは、雑種犬も“MIX”という血統書がつくとのこと!まったく良心的なブリーダーさんが聞いたら激怒する話です。売る側が一番の悪であることは明白ですが、買う側も命を迎えるにあたって安さと手軽さに飛びついているわけですね。犠牲になっているのは弱く生まれついた子犬たちとその母犬です。

 ヨーロッパでは、動物の陳列販売が禁止されている場合がほとんど。犬がほしい人は正当なブリーダーにコンタクトをとり、飼養にあたってもきちんと手ほどきを受け、すぐに引渡し・金銭の授受ということはないそうです。日本も早くそうなってほしい。でも、そうなると雑種犬はいなくなるの?たしかに、ヨーロッパでは、ラブラドードル(ラブ×プードル)やコッカープー(コッカースパニエル×プードル)など、特定の目的のためにミックスされた以外の雑種犬は基本的にいないといいます。しかし、自然繁殖の中から特定の性質だけを特化させてブリーディングしてきた現在の犬の血統には、遺伝病などの問題がつきものです。交雑することで互いの強い遺伝子が伝えられる雑種は、生物的にサバイバルされた優秀さを備えていると思うのですが・・・。これから雑種はますます減っていくことでしょう。ちょっと寂しい気もします。

 前述の広島のお客様は、「うちの犬はペットショップのショーケースに陳列されていた子。わたしのような飼い主がいるから、このように犠牲にならなくてはならない犬たちがいるんですね。」とも書いておられました。犬を家族として迎え、その幸せを純粋に願っている飼い主さんにとって、この事実を直視するのはたいへんつらいことでしょう。しかし、店頭やネットで簡単に命が買えてしまう環境や、ペットを利益追求の物品として扱うシステムを、わたしたち飼い主が気づき、考え、変えていかなければ。
 もうすぐクリスマスの季節、「かわいいペットをクリスマスプレゼントにいかがですか?」なんてチラシが新聞に折り込まれてくるたびに、言いようのない怒りと嫌悪感がこみ上げてきます。

 このような悪しき循環の中で、余った命は処分されていきます。広島ドッグパークのケースは、ボランティア団体が入ったことでかろうじて大量餓死という最悪の状況を回避できました。もちろん、救助もむなしくすでに亡骸となった犬たちもたくさん見つかっていますが・・・。でも多くの場合、誰も手をさしのべてくれないペットがここに1頭、あそこに1頭といて、その子たちを集めると何十万頭にもなっていた・・・というのが、悲しいかな、現実です。
 犬を幸せにするとは、どういうことでしょうか?犬好きな人に引き取られれば、すべての犬は幸せになれるのでしょうか?特に広島ドッグパークのように、テーマパーク、ショップの犬たちは家庭での暮らし方を知らず、体の衰弱、精神的なトラウマも加わり、幸せな家庭犬として引き取られていくまでに多くの人たちの助けを必要とするでしょう。そのような段階を経ることなく引き取るということは、愛情、根気、経済力においてかなりの覚悟がいることと思います。動物の保護・救助活動というものは、多くの場合、命を助ける人、ケアをする人、家庭に引き取る人の連携がスムーズにいってこそ良い結果がもたらされるのかもしれません。
 いざ家庭に引き取られるとなっても、やはりそこにはいくつかのハードルが立ちはだかります。我が家も保護犬を助けるぞ!病院犬を幸せにするぞ!と、もも、そしてはなを引き取りましたが、今思うと何の知識も覚悟もなく、数々の破壊、多頭飼いの権力争いなど、一時はみんなが疲れ果て、引き取ったことを後悔したこともありました。こうして今、円く納まったのは、犬も人もそれぞれがバランスを保つ努力をしたのだと思います。受け入れる覚悟をしなければならないのは、人だけじゃないんですよね。
 愛護活動に携わる人の中には、助けたい一心から犬屋敷・猫屋敷状態になり、経済的にも立ち行かず、動物たちのケアも行き届かず、いたずらに動物を増やす結果になり、近隣からも迷惑がられて、結局は人も動物も幸せでなくなってしまう本末転倒なケースもよく聞かれます。わたしたち飼い主が幸せでなければ、犬もまた幸せになれない、そんな気がします。

 ペットを取りまく社会には光もあれば影もあります。光だけ見ていれば心地よいけど、影の部分に目を背けることはできません。影の中でしか生きてこられなかった犬たちも、等しく光のもとで生きていけますように。この世で光が見られなかった子は、あちらの世界で光につつまれていますように。
 救助を待たずして亡くなっていった広島ドッグパークの犬たちの冥福を祈ります。生き残った犬たちは、1日も早い回復と、運命の飼い主さんとの出会いを心から願っています。

広島ドッグぱーく 

あなたのページにも

ARK-ENGELS
広島ドッグパークの救援状況、援助物資・資金の情報
http://arkangels.blog34.fc2.com/
譲渡会: 広島ドッグパークにて 10月21日(土)、22日(日) 10:00~17:00
http://ark-angels.jp/rescue.html

LIVING WITH DOGS記事 「放棄犬について考える」
http://living-with-dogs.com/modules/xfsection/article.php?articleid=719

 

幸せをつかんだ犬たち
北浦清人
幻冬舎文庫
幸福な犬
渡辺眞子
角川書店
ヨコハマドッグレスキュー北浦代表の本。前にも一度ご紹介した本なのですが、広島ドッグパークの崩壊と保護団体の救護活動に際して、改めて読み返したくなったので、ふたたび・・・。

犬を幸せにするってどういうことだろう。「捨て犬を救う街」の著者渡辺眞子さんが、ひとりの飼い主とて犬と向き合った体験記。しつけ書にはない、苦悩が少し、幸せいっぱいの犬との生活。










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