せっけん作りやドッグアロマテラピー、犬との生活から
感じたこと、学んだことなどを綴りました。
お役立ち情報とともにお届けします。

 
犬の十戒を知っていますか?
2006/6/15


 キリスト教にモーゼの十戒というのがあります。人間が犯してはならない10の戒めのことですが、わたしも子供の頃、日曜学校で毎週朗読したものです。実は犬にも「犬の十戒」があり、わたしたちが犬と暮らすとき忘れてはならない彼らからの10の願いが記されています。その中に、わたしが特に心を打たれる一節があります。
第8条
私にはあなたの手を粉々に噛んだり傷つける事もできる歯があるけれど、
それでも私はあなたを傷付けてはいけないと心に決めているのです。
Remember before you hit me
that I have teeth that could easily crash the bones of your hand
but I choose not to bite you.

Author Unknown
(作者不詳)
 和訳:えるまま
http://dogdom.chu.jp/ten/ten.html


 彼らがご機嫌ナナメのとき無理にかまおうとすると、反射的に攻撃の態勢に入ったりすることがあります。もちろんポーズをするだけで咬んだりはしませんが。でも、この素早さと彼らの強い歯をもってすれば、わたしたちを噛み砕き、息の根を止めることなどたやすいはず。日常生活で私たちの動きの中に狩猟本能を掻き立てられる場面を見つけることだってあるでしょう。でもそれをしない。わたしは彼らに尊敬にも似た気持ちさえ覚えます。

 ところが、事故は突然起こりました。しかも自分の身に。我が家の“もも”と“はな”が取っ組み合いのバトルになり、間に入ったわたしが咬まれたのです。2頭は数日前からほぼ同時にシーズンに突入し、精神状態がいつもと違っていました。2頭同時なんて、うちでは初めてでした。ももはしつこくはなの体を嗅ぎまわり、頻繁にマウンティングをしようとします。はなはももに従うことが多いのですが、たまに我慢ならない様子で反撃を試みます。ある朝散歩に出る直前に激しいバトルが始まり、怒鳴りつけて一瞬は収まりましたが、またもや取っ組み合いに・・・ はなが悲鳴を上げたので、とっさにわたしはもものカラーを真後ろから掴みました。しかし、次の瞬間にはわたしの腕から血がだらだらと溢れ出していて、瞬く間に床中血だらけになってしまいました。
 わたしのケガを見るなり、ももとはなはケンカをやめました。2頭はうちのダンナにかつてないほど叱責され、わたしはそのまま救急病院へ。傷はガブッと咬んだものではなく、牙が当たってそのまますり抜けたように真っ直ぐスパッと切れていました。8針縫って破傷風の注射を打たれました。
 治療がすむと病院でダンナと2人、ももとはなをあのまま家に残してきてしまい、またケンカをしてどちらかが瀕死の重傷を負っていたらどうしようと無性に不安になってきました。慌てて家に戻ると、2頭ともわらわらと出てきて傷のニオイを嗅ごうとします。ダンナに再び厳しいお叱りを受け、はなはすっかりいじけてしまいました。ももはというと、やろうと思ってケガさせたわけじゃないんだよーと言い訳をしながらも罪の意識にさいなまれているようでした。ホウタイをした腕を見せて、「ホラここ、ももに咬まれた。イタイ、イタイ!!」というと、耳を垂れてぷるぷる震え始めたので、もう叱るのはやめました。

 はなは2日間、こちらが心配するほどガックリして隅っこにうずくまっていましたが、徐々にもとの明るい子に戻っていきました。ももはいまだにホルモンに翻弄され、理性と本能の間を行ったり来たりしています。しかし、どんな状態でもわたしのホウタイの腕を突き出すと、我に返って静かにフセをします。
 メス同士の多頭飼いは要注意といいます。わたしは頭でそれを知っていても、実際に対処することができませんでした。自分が咬まれたのは自分の責任。つくづく他の人や他の犬でなく、自分でよかったと思います。
 事故の翌日、母に電話でこのことを話すと、
「倉敷のおじさんの所で飼っていた犬ね、実は人を咬んで責任をとったのよ。他の人をケガさせてたらももちゃんたいへんよ。」
つまり親戚の犬は、つながれていたときにたまたま近寄ってきた人を咬み、命で償ったというのです。とてもショックでした。土管の中で子犬の鳴き声が聞こえるというのでおじが重機を使って救出し、そのままそこの家の子になったという、強い命に恵まれた子だったのに・・・・・・

 ニュースで犬の咬傷事故が報じられるたび、きっと命で償うだろうその子の最期を想います。亡くなったりケガをされたりした方にはたいへんお気の毒なことで、やりきれない思いは察するに難くありません。ただ、なぜそのような事故に至ったのか、わたしたちは犬の目線で原因を探ってみたことはあるでしょうか。凶暴だとかしつけがなっていないという人間が決め付けた理由だけで彼らに命で償いをさせているのなら、たいへん悲しいことです。

犬の十戒

ジュリアン出版
犬が訴える幸せな生活
わかって下さい!何を考え、
何を望んでいるか

林 良博
光文社
わたしたち飼い主を一心に見つめる、犬たちのけなげさ、ひたむきさが淡々と伝わってきます。そのメッセージは子犬の頃に始まり、やがて老犬になり亡くなっても、飼い主の心に残るのです。作者不詳ですが、もしかしたら犬自身がわたしたちに授けた言葉なのかも・・・ 著者の林先生は東大農学部・学部長で有名な犬の研究者。先生の肩書きのイメージに反し、「僕」という一匹のオス犬の言葉で書かれた犬への愛情を感じる一冊です。犬の十戒と同じく、「僕」からの11通の手紙で犬の衣食住を解説。時間がたっても古びることなく読み継がれる本だと思います。









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